大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和30年(ワ)8976号 判決

原告 清水袈裟成

被告 大丸商品株式会社

主文

被告は原告に対し(一)、三菱日本重工業株式会社株券一株につき額面金五十円のもの五百株(二)、山一投資信託株式会社受益証券一口につき額面金五千円のもの八口(三)、新潟鉄工株式会社株券一株につき額面五十円のもの八百株を返還し、かつ金一千七百六十円及びこれに対する昭和三十年十二月十三日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

右各証券中、被告において返還不能のものがあるときは、被告は原告に対し前記(一)の株券について一株金六十七円、(二)の証券については一口金四千九百八十一円十七銭、(三)の株券については一株金七十円の割合による金員とこれに対する右各返還不能の日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告において担保として金五万円、又はこれに相当する有価証券を供するときは原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

原告は主文第一項同旨及び「主文第一項記載の各証券中、被告において返還不能のものがあるときは、被告は原告に対し前記(一)の株券については一株金六十七円、(二)の証券については一口金四千九百八十一円十七銭、(三)の株券については一株金七十円の割合による金員とこれに対する昭和三十年十二月十三日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告の負担とする」旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として「原告は取引所の仲買人として営業している被告との間に小豆相場の取引をなすことを約し、その証拠金として昭和三十年八月十日に金二万円を、その証拠金代用として同月十二日に三菱日本重工株式会社株券一株につき額面金五十円のもの五百株を、同月十三日に山一投資信託株式会社受益証券一口につき額面金五千円のもの八口を、同年九月五日に新潟鉄工株式会社株券一株につき額面金五十円のもの八百株を被告に預託した。その後原告は被告に対し同年九月十日に小豆相場三枚、同年十月三日に小豆相場三枚の各買付をして前記委託証拠金及び代用証券を以つてこれに充当することを約したところ、同月二十二日右二口の取引について手仕舞をしたのであるが、相場の下落によつて原告は手数料を含めて合計金一万八千二百四十円の損失を蒙つた。そこで原告は前記証拠金二万円中の右損失額に相当する金員を以つて前記損失に充当し、残余の金一千七百六十円の支払と前記代用証券全部の返還方を被告に要求したが、被告はこれに応じない。よつて原告は被告に対し前記各代用証券全部の返還を求め、かつ右証拠金残額金一千七百六十円とこれに対する本件訴状に代る準備書面が被告に送達された日の翌日である昭和三十年十二月十三日より完済に至るまで商事法定年六分の割合による損害金の支払を求め、もし被告において右代用証券中返還不能のものがあるときは、現時における前記三菱日本重工株式会社株券一株は金六十七円、山一投資信託株式会社受益証券一口は金四千九百八十一円十七銭、新潟鉄工株式会社株券一株は金七十円であるので被告は原告に対し右返還不納の証券については夫々右の割合による金員を支払うべき義務があるから右金員とこれに対する本件訴状に代る準備書面が被告に送達された日の翌日である昭和三十年十二月十三日より完済に至るまで商事法定年六分の割合による損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだものである」を述べた。

被告代表者並びに被告訴訟代理人は適式の呼出を受けながら、いずれも昭和三十一年二月十六日午前十時の本件口頭弁論期日に出頭せず、かつ答弁書その他の準備書面をも提出しなかつた。

理由

原告の主張事実は被告において明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなすべく、而して本件訴状に代る準備書面が被告に送達された日の翌日が昭和三十年十二月十三日であることは本件記録上明らかなところである。然しながら原告主張の各証券の返還が不能の場合のこれに相当する金員及びこれに対する損害金の請求については右各証券の返還が現実に不能になつたとき初めてこれに代る金員の請求ができるのであるから、それ以前に右金員に対する利息相当の損害金の請求をすることができないことは当然のことである。従つて原告主張の事実によれば原告の本訴請求中、被告に対し、(一)、三菱日本重工株式会社株券一株につき額面金五十円のもの五百株、(二)、山一投資信託株式会社受益証券一口につき額面金五千円のもの八口、(三)、新潟鉄工株式会社株券一株につき額面金五十円のもの八百株の返還、並びに金一千七百六十円及びこれに対する昭和三十年十二月十三日より完済に至るまで商事法定年六分の割合による損害金の支払を求め、もし右各証券中、被告において返還不能のものがあるときは前記(一)の株券については一株金六十七円、(二)の証券については一口金四千九百八十一円十七銭、(三)の株券については一株金七十円の割合による金員とこれに対する右各返還不能の日より完済に至るまで商事法定年六分の割合による損害金の支払を求める限度においてこれを正当として認容しその余は失当であるからこれを棄却し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十二条を仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山本茂)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例